パパ30年ぶりの読書感想文(14)~起業家 藤田晋~
サイバーエージェント代表取締役、藤田晋氏による自伝的1冊。熱い…!!「21世紀を代表する会社」という理念を掲げ創られたサイバーエージェントも、順風満帆ではなかったのですね。悩み、迷い、不安と戦いながら自分を信じ、社員を信じ、その結果としての今があるという。
起業を志す者でなくとも、ビジネスマンでなくとも、必読の書!
2018年最高の一冊は堀江貴文さんの「ゼロ」かなーと思っていたのですが、この「起業家」もめちゃめちゃ素晴らしい!
ひとりの青年が起業に託す思い。純粋に物語としても面白いんです。「半沢直樹」以降、社会派ドラマが増えた気がするのですが、ああいうドラマ好きな人なんかは面白く読めるんじゃあないでしょうか。「下町ロケット」「陸王」とか…。
サイバーエージェントといえばブログサービス「アメーバブログ(通称アメブロ)」が有名です。しかしアメブロがここまで普及するまでの道のりが、こんなにも苦難と執念に満ちたものだったとは。
藤田氏がサイバーエージェントの軸に据えようと考えつつ、なかなか利益と実が伴わない「メディア事業」。株主には無能な経営者と言われ投資家には嘲られ、社員にも「負け馬には乗りたくない」と敬遠されてきたメディア事業部を「必ず将来サイバーエージェントの核となる」と信じて育て続ける藤田氏の姿といったらもう。
「メディア事業部が2年間でうまくいかなかったら、私は社長を退任します」と宣言し、自らメディア事業部をプロデューサーとして率いる藤田さん。本人も述べている通り「熱狂」と言ってしかるべき鬼気迫る姿。アメーバブログが30億ページビューページビューを達成し、黒字化した瞬間は読者であるぼくもほっと胸をなでおろしました…。
アメーバブログが普及した今から遡ってみてみると「これだけの努力の陰に今のアメブロがあるんだなぁ…」なんて思えますが、当時アメブロを育てていたスタッフは、今の仕事と努力が未来にどうつながるのか確証はなかったはずです。
暗闇の中で糸口も見えず、それでも邁進するしかない。目の前の仕事が明日へとつながると信じてやっていくというのは、言葉で言う以上に大変なことだったことでしょう。
起業家を読み終わった後にサイバーエージェントのサイトを見て「メディア事業」の文字を目にするとなんていうか込み上げてくるものがありましたね。
また、藤田氏はライブドアを率いる堀江貴文さん通称「ホリエモン」とも懇意だったようで、ライブドアとサイバーエージェントがともに、切磋琢磨しつつ業界を突き進んでいく姿は心が躍るものがあります。仲間として、時にはライバルとして…。
そんな堀江さんのライブドアに強制捜査が入る場面もすごい。ライバルにして盟友が収監されていくその姿を、著者はこう見ていたのか…実際に起きた瞬間を知っているだけにドキドキが止まりませんでした。
ライブドアといえば、思い切りの良い舵の切り方をする堀江さんに比べて、慎重な経営といえる藤田氏。「我々が慎重にやっている間に勝負が決まってしまうかもしれない。自分たちは信念をもって自分たちの経営を貫いているつもりでしたが、もしかしたら、単に我々の経営能力が低いだけなのかも知れない。」と、実に人間らしく悩んだりもします。当たり前ですが、起業して世の中を変えていこうと考えていたとしても、やはりそこは普通の、人間なんですよね…。
何度も失敗し、葛藤し、疲弊しボロボロになりながらも前に進むことをやめず、信じることをやめない。
ちなみに藤田晋さん、気分転換だったりでHIPHOPのライブに行くそう。
そこで引用されたフレーズがなんと、ぼくも大好きなTha Blue Herb!!
この本の冒頭、そしてシメがブルーハーブのILL-BOSSTINOのリリックなんですよ。
「孤独、憂鬱、怒り、それを3つ足してもはるかに上回る希望」
読み始めの冒頭でこのリリックを目にしたとき
260ページ読み進めた後、エピローグで同じセンテンスが出てきたとき
まったく言葉の重さが違って聴こえるから不思議なものです。
起業家。
超おすすめです。
M&Aとかそういうよくわからない言葉は、ググりながら読めばビジネスにも詳しくなれて一石二鳥ですよ!