パパ30年ぶりの読書感想文(5)~図解 使える失敗学 畑村洋太郎~
人ってなんで失敗したりするんでしょうねー。
失敗はイヤなものですし、誰しもせずに過ごせたらそれに越したことはないって話なんでしょうが、それにしても世の中って失敗に厳しすぎやしませんか。
99%うまくできても、1%の失敗ばかりがフォーカスされて、話題にのぼるのは「あいつこんな失敗したんだぜ。あいつこんなダメなことやっちゃったんだぜ」ばかり…
あーもう、にどと失敗しないぞ。失敗だけは…
そう考えれば考えるほど体は緊張し、頭の中はいっぱいになり、体は汗ばみ…
あぁ!またやってしまった…!!
人間の脳って「否定形を理解できない」らしいんですよ。この前読んだなにかの本に書いてありました。だから「失敗しない失敗しない…」と考えるということは、
「失敗する自分」
「を、否定形で認識」←だけど、これはできない。
というメカニズムがあるとのこと。
だから、子どもにものを運ばせる時も
「こぼしちゃダメだよ!」
ではなく
「ぎゅっとしっかり持ってね」
が正解だという。なるほど。
☆
ともあれ失敗しない人間なんていないわけです。そこを攻撃する人もいればフォローしてくれる人もいる。
失敗が0%になり得ないのならば、失敗からせめて学んでいこう。次につなげよう。
または自分がなぜ失敗してしまうのか?掘り下げてみよう!
☆
そんな思いで読んでみたんですが、
なかなか面白かったです!
章立てがうまくできてるんですよね。
立体的というか。
まず
「失敗なくして発展はない」
「後始末は、被害最小の原理でやろう」
「人の力を借りて元気になろう」
といった入り込みやすいところを切り口に
「原因の分析の仕方」
「伴って、失敗を図表化して自分の傾向を知ろう」
という一歩踏み込んだ内容へ。
そこから
「重大事故に学ぼう」
「遺族の思いを知ろう」
などの、読み物としても読ませてくれる内容を経由して
「思いつきノートをつけよう」
「付加設計ではなくトータル設計をしよう」
と、実践的なミスへの対策を提案してくれたり
後半は
「新規事業は隣接分野でしか成功しない」
「新たに物事を始めた時、成功率は0.3%」
などなど、失敗をおそれて動くことのできない時に支えとなりそうな「失敗との向き合い方」をレクチャーしてくれます。
立体的といったのは「誰が読んでも、どこかしらは<面白い!>と感じる箇所、心に引っかかる場所がありそうだな」ということなんですよね。
☆
あと「図が多くてわかりやすい」ですね。
講義と、その講義に伴った板書をあわせて体験しているような感覚です。著者はなんかの先生なんだろうかと思ったのですが、東大の名誉教授でした。畑村洋太郎氏。図解はわかりやすいものもあれば、正直ぼくでは理解の及ばないものも。
☆
講義というパッケージを本という紙媒体に落とし込む時に絶対に失われてしまうものがいくつかあるのですが、そのうちのひとつが
「時間(過程・経過)」なんですよね。
この本の中で
「著者の論」
と、
「著者のイメージする図式」
が展開されるわけなんですが、たとえばこれが講義だと捉えると、
①著者が講義をする
②伴って、板書が作成されていく
③板書に関しての解説がなされる
④伴って、板書に書き足しが追加されていく
というプロセスをたどると思うんです。
ですが「本」というそれ一冊である程度完成した世界となっているもの基準では
・講義の内容
・レジュメ
というその2つが最初に100%提示されて、一気に目に飛びこんで来ざるを得ないんですよね。
別に、どっちがいいとか悪いとかではないんですか、この著者にこの書き方はあってるのかな?ってのは思いました。
ライブ感が得られないというか。
実際にお話聞くことができたら、もっとすんなり腑に落ちるところも多いんだろうなー。
☆
さてそれでは、ぼくがこの本で気に入ったエピソードのひとつを紹介します。「橋」の話なのですが…
…世界の巨大橋には
「ひとつの構造の橋が崩落するまでに30年」
という周期性がある。
技術者は、橋が崩落するとまた新たな橋を設計し、それが崩落するとまた新たな橋を設計することで、より巨大な橋を設計してきた。
だが「巨大化すること」による新たな危険性、「危険な要素」が入れ替わったことに気づかずに、過去の成功指針にばかり頼って設計をする。
成功に対する社会の賞賛が技術者の傲慢を助長し、過去の失敗に学ぶことを忘れさせ
大惨事を引き起こしてしまうのだ。
「あくまで謙虚に過去の失敗にまなぶべき」というお話でした。
☆
いかがでしたでしょうか?
どうせついて回るものなら、
味方につけた方がいいですよね。
予防・対処・切り替え・実践など、いろいろと教えてくれております。
さあ!
この本を読んで、
失敗のプロフェッショナルになりましょうー!